ヒ素は、地殻中に広く分布していますが、
火山活動や産業活動や生活廃棄物で、環境を循環しています。
単体のヒ素や、ヒ素化合物は、人体に非常に有害です。
ヒ素は、中世ヨーロッパ時代から現在まで、自殺や他殺に使われる毒物で、
わずかな量でも、死に至ります。
無機ヒ素による致死量は、成人で、0.1〜0.3gとされています。
日本では、1955年に、森永ヒ素ミルク中毒事件がありましたが、
原因は、粉ミルクにヒ素が混入したからで、乳児が3ヵ月にわたってヒ素を摂取し、
130人を越える乳児の死者と12,000人を越える中毒者を出しました。
また、1998年に、亜ヒ酸を使った和歌山毒物カレー事件がありましたが、
4人が死亡し、63人が急性ヒ素中毒になりました。
そのカレーのヒ素濃度は、6,000(mg/l)以上だったそうですが、
この濃度だと、カレーが33ml(大さじ2杯ちょっと)ほどで、致死量になります。
また、高濃度のヒ素の含まれた水を飲むことは、自殺行為で、
低濃度でも体内に蓄積するので、長期的に低濃度のヒ素の含まれた水を飲むと、
中毒を発症します。
また、ヒ素は、発がん性があります。
ヒ素は、IARC(国際がん研究機関)では、
グループ1(人に対する発がん性が認められる )に含まれます。
また、ヒ素を取り扱う仕事をしている方に、
肝臓がん、皮膚がん、肺がんなどのがんになる人が多いそうです。
また、水道水のヒ素の発ガン率は、日本の水質基準値の場合は、
10万人に60人とされています。
ところで、近年に、天然の無機ヒ素による大規模の慢性ヒ素中毒が、
アジア(インド、バングラデシュ、中国、ネパール、タイ、台湾など)や、
南米(メキシコ、アルゼンチン、チリなど)でよく見られるそうです。
慢性ヒ素中毒になると、主に皮膚に障害が出てきますが、足が壊疽になったり、
腎臓がん、膀胱がん、肺がん、皮膚がんになる場合がありますので、
慢性ヒ素中毒は、深刻な病気です。
慢性ヒ素中毒数は、ある国際機関では、
潜在的な患者数を含めると、8,000万人以上になると、
推測しているそうです。
慢性ヒ素中毒の患者が飲んでいる井戸水の無機ヒ素の濃度は、
大部分はが50〜1,000(μg/l)だそうです。
ところで、日本では、慢性ヒ素中毒患者は、
あまりいないそうですが、水道水の水質基準値のヒ素でも、
発がん率が上がると考えられているので、水道水のヒ素濃度は、危険であると言えます。
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